台風被害と事前対策
今回は、実際にあった台風被害と事前対策についてご紹介いたします。
まずは【漏水被害】のご紹介です。
6階建てのRC物件、6階から5階への漏水でした。
天井から大量の水を鍋で受けている、という状態です。
今回の漏水は601号室のベランダ部分が原因となっていました。
下の写真のドレン管が詰まっていることが一つ目の原因。
ベランダの防水加工が取れていたことが二つ目の原因でした。
ドレン管が詰まることによってベランダ部分がプールのようになっており、防水加工が取れている部分からじわじわと水が浸透していき、それが階下へ流れていった、という状況になっていたようです。
ただ、下は天井部分の写真なのですが、「じわじわ」という割には勢いよく水が漏れている状態です。
今運が悪いことにこちらの物件、屋上の水がすべて601号室のベランダへ流れる仕組みになっていました。
そのため、屋上に溜まった雨水と601号室のベランダの雨水がすべて501号室に流れてしまったようです。
台風が起きる前、なにをしていれば漏水は起きなかったのでしょうか?
①ドレンの高圧洗浄
ドレンのつまりさえなければ、601号室のベランダがプール状態になることはなく、501号室号室に水が流れていくことはありませんでした。
一般的に高圧洗浄は目安として新築後7年、その後は3年おきと言われていますが、管理をしていくうえで見落としがちな部分になっていますので、トラブルを未然に防ぐためにも必ず実施していきましょう。
共用廊下にもドレンがありますのでそれを目安にしたり、退去時に確認するのが良いかと思います。
②防水加工
ドレンのつまりがなかったとしても、台風や豪雨が発生すると防水加工の切れ目からじわじわ水が浸透していくことがあります。過去に行った防水加工の種類にもよりますが、前回の施工から10年経っていれば十分検討するタイミングかと思います。
前回いつ行ったか記憶がない方は、早めに管理会社などに確認することをおすすめします。
次に【台風によって発生した飛来物】の事例です。
部分的な写真にはなりますが、こちら2階建て18戸あるアパートになっています。
このように陥没している箇所が約10か所、住戸部分のガラスが割れたのが2か所という被害でした。
強風で近隣のAさん宅の瓦が飛んできた、という事例です。
実は今回の案件、OW様は瓦が飛んできたお宅のAさんへ、被害額を「請求できません」でした。
理由といたしましては「瓦が飛んでしまっているお宅が周囲に何棟もあった」という事実があったからです。
仮に瓦が飛んでしまっていたのがAさんのお宅だけだった場合、所有者の管理責任ということで責任を追及できますが、周辺のお宅でも瓦が飛んでしまっているという状況の場合、いくら適切な管理をしていたとしても瓦が飛んでしまっていただろう、ということで責任を負わせることはできません。
このような場合、事前に何をすればよかったのでしょうか?
①火災保険の加入
今回のオーナー様はたまたま火災保険に加入されておらず、修繕にかかった費用をご自身で負担することになってしまいました。
火災保険に入っている方でも、「どのような案件が発生した際に火災保険が適用されるのか」という部分を今一度見直していただきたいと思います。
②屋根の状態の確認
これは被害者というよりも、加害者にならないための予防です。
強力な台風が発生した際、きちんとメンテナンスを行っていれば万が一の時にもご自宅だけが責任追及される可能性は低くなります。
屋根の状態の確認は日ごろからあまりすることはないと思いますが、台風シーズンの前にぜひ一度点検していただくのが良いのではないでしょうか。

石井 賢佑
株式会社アートアベニュー オンサイトマネジメント課