不動産投資の想定家賃は妥当?家賃査定の見抜き方
不動産投資を検討していると、不動産会社や建築会社から収支シミュレーションを提示されることがあります。
その中で特に注意したいのが、想定家賃です。
想定家賃が少し高く設定されているだけで、表面利回りやキャッシュフローは良く見えます。しかし、実際の募集でその家賃が通らなければ、空室が長引いたり、家賃を下げざるを得なくなったりします。
「新築だから大丈夫です」「このエリアなら決まります」と言われても、その根拠が曖昧なら注意が必要です。
この記事では、購入判断全体ではなく、収支シミュレーションの前提となる想定家賃が妥当かどうかを確認する方法に絞って解説します。家賃査定で見るべきなのは、「いくらで募集できるか」ではなく、「いくらで決まる可能性が高いか」です。
アパート投資の購入判断全体の流れは、以下の記事で整理しています。
目次
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想定家賃は高く設定されることがある
不動産投資の収支シミュレーションでは、想定家賃が高めに設定されていることがあります。
理由はシンプルで、家賃を高く見積もるほど利回りが良く見えるからです。
家賃が高いと利回りも良く見える
表面利回りは、年間家賃収入を物件価格で割って計算します。
つまり、想定家賃を高く設定すれば、同じ物件価格でも利回りは上がります。
たとえば、1部屋あたりの想定家賃を数千円高く見積もるだけでも、1棟全体では年間収入に大きな差が出ます。その結果、物件が実際より魅力的に見えてしまうことがあります。
販売会社や建築会社は、物件を売ること、建てることが目的になりやすい立場です。提示された収支をそのまま信じるのではなく、想定家賃の根拠を必ず確認しましょう。
「新築だから大丈夫」だけでは根拠にならない
新築物件は、たしかに募集時に有利になることがあります。
ただし、「新築だからこの家賃で決まる」という説明だけでは不十分です。
新築プレミアムがあっても、周辺相場より明らかに高ければ、入居者に選ばれにくくなります。また、築年数が経つにつれて新築の強みは薄れていきます。
確認すべきなのは、担当者の感覚ではなく、周辺で実際に決まっている家賃です。
「新築だから」「人気エリアだから」という言葉だけで判断せず、具体的な比較データがあるかを見ましょう。
ポータルサイトの募集家賃だけで判断しない
家賃の妥当性を確認するために、SUUMOやHOME’Sなどのポータルサイトを見る方は多いと思います。
これは必要な確認です。
ただし、ポータルサイトの募集家賃だけで判断するのは危険です。
募集家賃は「まだ決まっていない価格」
ポータルサイトに掲載されている家賃は、現在募集中の価格です。
つまり、その家賃で入居者が決まった価格ではありません。
長く掲載されている物件は、家賃設定が高すぎて決まっていない可能性もあります。募集家賃をそのまま相場として見てしまうと、実際に決まる家賃より高く見積もってしまうことがあります。
家賃査定では、募集家賃と成約家賃を分けて考える必要があります。
成約家賃の方が査定根拠として重要
家賃査定で本当に重要なのは、実際に契約が決まった成約家賃です。
たとえば、7万円で半年間決まっていない物件より、6万8,000円で最近成約した物件の方が、査定の根拠としては信頼しやすいです。
成約家賃は、一般の投資家が簡単に確認できない場合もあります。
だからこそ、管理会社や仲介会社に「実際にいくらで決まっていますか」と確認することが重要です。
募集価格だけでなく、成約価格に基づいて判断することで、想定家賃のズレを減らせます。
家賃査定は比較条件をそろえて確認する
家賃査定では、周辺の似た物件と比較することが基本です。
ただし、ただ近い物件を見るだけでは不十分です。駅距離、築年数、構造、面積、階数、設備、間取りなど、条件をそろえて比較する必要があります。
似た物件と比較して加点・減点する
信頼できる査定では、対象物件と類似物件を比較しながら、条件ごとに加点・減点して家賃を考えます。
家賃査定では、構造、駅距離、部屋の広さ、階数、設備などを比較するコンペア方式が有効です。
たとえば、対象物件の方が駅に近ければ加点、設備が弱ければ減点、面積が広ければ加点、築年数が古ければ減点といった考え方です。
単に「周辺が7万円だから、この物件も7万円」と見るのではなく、条件差を調整して判断することが大切です。
設備による家賃差も確認する
設備の有無も、家賃査定に影響します。
独立洗面台、オートロック、インターネット無料、宅配ボックス、浴室乾燥機、室内物干しなどは、入居者が重視しやすい設備です。
ただし、設備があるから必ず家賃を上げられるわけではありません。
そのエリアの入居者が本当に重視している設備か、競合物件にも同じ設備があるか、どれくらい家賃差につながっているかを確認する必要があります。
設備投資を検討する場合も、「この設備があるといくら高く貸せるのか」という根拠を確認しましょう。
想定家賃の妥当性を見抜く質問
販売会社や建築会社の想定家賃が高いと感じたときは、相手に具体的な根拠を確認する必要があります。
そのときに有効なのが、サブリースできるかどうかを聞く方法です。
「その家賃でサブリースできますか」と聞く
想定家賃の妥当性を確認するときに有効なのが、
その家賃でサブリースできますか?
という質問です。
本当にその家賃で貸せる自信があるなら、会社として借り上げる判断ができる可能性があります。
一方で、「その家賃ではサブリースできません」「保証すると家賃は下がります」と言われるなら、提示された想定家賃にはリスクがあると考えるべきです。
これは、サブリース契約を勧めるための質問ではありません。提示された家賃に、会社としてどこまで責任を持てるかを確認するための質問です。
相手の言葉ではなく、会社としてリスクを取れる金額かを見ることが重要です。
回答の曖昧さも判断材料になる
この質問に対して、担当者が明確に答えられるかも重要です。
「大丈夫だと思います」「新築なので決まります」といった曖昧な返答だけなら、査定根拠が弱い可能性があります。
反対に、信頼できる会社であれば、成約事例や比較条件を示したうえで、「この金額までは現実的です」「保証するならこの金額です」と説明できます。
家賃査定では、金額そのものだけでなく、その金額に至る根拠と、担当者の説明の具体性を確認しましょう。
管理会社の査定を確認する
不動産投資では、販売会社や建築会社の査定だけでなく、実際に管理を引き受ける会社の見解を確認することが重要です。
なぜなら、購入後に空室リスクや家賃下落の影響を受けるのは、オーナーと管理会社だからです。
売る会社と管理する会社では視点が違う
販売会社や建築会社は、物件を売ること、建てることが主な仕事です。
一方で、管理会社は、購入後に入居者を募集し、空室を埋め、賃貸経営を継続していく立場です。
査定を誤れば、空室が続き、オーナーからも厳しい目を向けられます。
そのため、管理会社の査定は、販売用の強気な数字よりも現実的になりやすいです。
購入前には、販売側のシミュレーションだけでなく、管理会社の賃料査定も確認しましょう。
購入前にセカンドオピニオンを取る
検討している物件の想定家賃に不安がある場合は、購入前に管理会社へ家賃査定を依頼するのも有効です。
確認したいのは、以下のような点です。
・この家賃で本当に決まるのか
・募集時にどのくらいの期間がかかりそうか
・競合物件と比べて高すぎないか
・家賃を下げる場合、どのラインまで見ておくべきか
こうした点を確認しておけば、購入判断の精度が上がります。
不動産投資では、契約後に家賃設定の誤りに気づいても、取り返しがつきにくいことがあります。購入前に第三者の目を入れることが大切です。
家賃査定は収支シミュレーションに直結する
想定家賃は、不動産投資の収支シミュレーションの土台です。
家賃設定がズレると、キャッシュフロー、利回り、IRR、DSCR、10年後の純資産まで影響を受けます。
家賃が下がるとキャッシュフローが変わる
想定家賃より実際の成約家賃が低くなると、毎月の収入が減ります。
1部屋あたり数千円の差でも、戸数が多ければ年間では大きな差になります。
家賃収入が下がっても、ローン返済、管理費、固定資産税、修繕費などの支出は大きく変わりません。
そのため、想定家賃が高すぎる物件は、購入後にキャッシュフローが想定より悪化しやすくなります。
不動産投資のシミュレーション方法は、以下の記事で整理しています。
家賃下落も見込んで判断する
新築アパートの場合、購入直後は新築プレミアムで高めの家賃が取れることがあります。
しかし、築年数が進むにつれて、家賃は下がる可能性があります。
購入時点では、初年度の家賃だけでなく、5年後、10年後にどれくらいの家賃で貸せるかも確認しておきたいところです。
家賃下落を見込んでも収支が成り立つか、空室が出ても返済に無理がないかを確認しましょう。
まとめ
不動産投資では、想定家賃の妥当性を確認することが非常に重要です。
販売会社や建築会社の収支シミュレーションでは、想定家賃が高めに設定されていることがあります。家賃を高く見積もれば利回りは良く見えますが、実際にその家賃で入居者が決まらなければ、空室や家賃下落によって収支が崩れます。
ポータルサイトに掲載されている募集家賃だけで判断するのも危険です。募集家賃は「まだ決まっていない価格」であり、実際に契約された成約家賃とは違います。
家賃査定では、駅距離、築年数、面積、設備、階数などを比較し、成約事例をもとに判断することが大切です。
提示された想定家賃に不安がある場合は、「その家賃でサブリースできますか」と聞いてみましょう。これはサブリース契約を勧めるためではなく、会社としてその賃料リスクを取れるかを確認するための質問です。
購入前には、販売会社や建築会社だけでなく、管理会社の家賃査定も確認することをおすすめします。実際に募集し、管理する立場の意見を聞くことで、想定家賃のズレを減らし、購入判断の精度を高めやすくなります。
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、CPM®(米国不動産経営管理士)、第一級海上特殊無線技士、毛筆八段
海上保安庁、賃貸仲介営業を経て、賃貸管理会社である株式会社アートアベニューに入社。大家さんの安心経営を叶えるべく、賃貸住宅の企画・運営をお手伝いしています。
