第135回 管理受託営業手法②

チーム営業のため社内情報共有

管理内容とリスク負担を明確化し他社と差別化

前回に続き、管理受託手法について書く。

 

表1「管理獲得のためにすべきこと」の⑥が「ヨミ表(見込みリスト)で進捗管理」である。

皆さんの会社では、「営業」と呼ばれる人たちの進捗確認において、「ヨミ表(見込みリスト)」を活用されておられるだろうか?

もし利用されてないのならそれは致命的である。これがなければ、月末の「結果」だけを管理していることになる。

 

「ヨミ表」という言葉はリクルートが発祥と聞いているが、営業の契約の「ヨミ」を一覧にするものであり、各クライアントの契約可能性の「読み」を提示して、上司や同僚からチェック、アドバイスを貰い日々の営業に役立てるものである。

また、マネージャーが年間のまた月間の目標を達成できるかを日々チェックするものでもある。

マネージャーは最低でも週に1回、できれば2〜3日に一回はこの「ヨミ表(見込みリスト)」を基に、部下からヒアリングをして、アドバイスをしなくてはならない。

 

「ヨミ表(見込みリスト)」には、現在、営業しているクライアント名とその規模(月額賃料・戸数)とエリア、そして一番大事な「契約の確度」を明確にする。

確度とは、たとえば、Aランクは90%の、Bランクは70%、Cランクは50%、Dランクは単に可能性あり、というふうに表現することだ。

各営業パーソンが自分ならに確度を判断して明示するのだが、冷静に考えて、まだ50%程度なのに90%と思っていて、ヨミが甘い人もいれば、妙に低い確率で表現したりする人もいる。

ヨミが甘いとは、決定権者にまだ会っておらず、たとえば、最終的に決めるのは父親なのに、息子がOKと言っているから90%大丈夫と過信したりすることだ。

過信して、次のアポイントを取らずにのんびりしていたら、父親の知り合いに不動産会社に勤務している人がいて、その紹介であっさりNGになってしまったりすることがある。

よって、マネージャーは、父親にいつ会う予定なのかと、進捗を確認してアポイントを促すようなことをしなくてはいけない。

 

確度を低く見積もる人も要注意だ。

こういう人は、確度を上げて報告すると上司にその案件のことを、しょっちゅう聞かれるのが嫌で、まだまだです、Dランクですとか言って、案件化させないのだ。

よって、上司も進捗確認やアドバイスが出来ない。

こういう営業パーソンは、同じように自分の力を過信しているタイプかもしれない。

自分自身で契約は取ってくるから、結果だけ報告すればいいと思っているのだ。

 

上司や同僚からの意見やサポートがあったほうが確実に契約の確率は上がる。

「チームで仕事をする」という意識が低いタイプかもしれない。

発生原因がたとえば、既存のクライアントだったりすれば、上司がその方のことを以前から良く知っているから、一言電話ででもお願いするように言ってみるよとか、その計画では間取りが悪いから、うちに来社してもらって一緒に考えたりする機会を作ってみようかとか、他の同僚がこういう営業トークでクロージングできたからやってみたらどうだろうかとか、営業の手法やアイデアはいろいろあるし、なんらかの接点がないかをチームで模索するのだ。

 

また、顧客管理システム、CRM(Customer Relationship Management)というが、そういうソフトを利用することも有用だ。

弊社はセールスフォースを使っているが、もう少し安いものでというなら、ハンモック社のホットプロファイルなどもある。

営業先との経緯をきちんと記録しておくことは重要だ。

担当が変わったり、退職した場合などに、情報がすべて無くなってしまうことになる。

会社、つまり組織としてお客さんと相対しているのだから、組織が情報を記憶していなければいけないのだ。

そのためにはできるだけマメに情報を残していかねばならない。

 

ちなみに、そうは言っても、情報を全部記録することは難しい。

社員が退職することになったときには、引き継ぎをするが、お客さんとのやり取りを残していってくれと頼んでも、辞める気でいるものがそんなにマメに情報を残してくれてはくれないものだ。

 

そこで弊社では、スタッフが録音を取りながら、「インタビュー形式」でいろいろなことをヒアリングして、PCに入力してゆくという形をとっている。

話すだけなら楽なので、営業先やクライアントとのいろいろな出来事や、情報を語ってくれるというわけだ。

 

営業ツールは実績を強調

⑦の「営業ツールの充実」だが、管理受託営業のための「パンフレット」、「ホームページ」、「管理契約書」がしっかり準備されているだろうか。

会社の概要書ではない、管理の内容を明確に表して、つまりうちに任せてくれたらどういう管理をします、どういうリスクを負いますよ、ということを表現しているものだ。

 

他社とどう違うのか、を述べたい。

ただ、入居者を募集します、契約します、家賃を集めます、クレーム対処します、建物メンテナンスします、退去リフォームします、だけでは他の管理会社となんの違いもないのだ。

これらのツールを作るには、実は「どういう管理をするか」ということが明確になっていないと出来ない。

まず、そこから詰めないといけないのだ。

 

そこがはっきりしたら、管理契約書を作成し、パンフレットやホームページにそれを反映するのだ。

そして、できればパンフレット等では「実績」を強調したい。

お客さんは、その会社のいままでやってきたことを、やっていることを見たいものだ。それらの経験値を測っているのだ。

 

⑧の「インセンティブ(歩合)制度」についてだが、結論からいうと、基本給以外の過度な報酬はやめたほうがいいと思う。

報酬につられてガッツのある営業パーソンがやってはくるが、長続きしないことが多い。

「稼ぎたい」とする人だから、会社のこと全体をあまり考えてはくれないし、先程言ったようなチームで協力しあって仕事をするという姿勢もない人が多い。

また、基本給をもらっているのに、歩合給に繋がることはやるが、それ以外のことには無関心という露骨な人も現れる。

営業なのだから、ある程度のインセンティブがあってもいいが、高額にしないことだ。

そうしないと営業以外の部署にジョブローテーションをしようと思っても、給与が下がるから移動させられない、というようなことも起きてしまう。

 

また、コロナウィルスの影響で、テレワークやWEB会議システムが話題になっている。

弊社では、PC上で対面営業ができる「ベルフェイス」を使っているし、テレビ会議システムでは「ポリコム社」を導入して、東京、沖縄、宮古島を結んで朝礼も会議も行っている。

また、他社さんとWEB会議をする場合は、最近では「ズーム」を使うことも増えた。音質や画像も良いので重宝している。

直接対面が一番いいのはもちろんだが、移動の時間やコストを削減できて合理的だ。

藤澤 雅義(Mark藤澤)

アートアベニューの代表取締役であると同時に、全国の賃貸管理会社を支援するコンサル企業:オーナーズエージェント株式会社の代表取締役も務める。

しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。

あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に時津風部屋)を応援している。