不動産投資の キャッシュフローツリー とは? 計算方法やシミュレーション方法を紹介

不動産投資をすでに行っている方、またはこれから始めようと考えている方の中には、
「買いたい物件はあるけど、実際どれくらい利益が残るのかよく分からない…」
「帳簿上は黒字なのに、手元にお金が残らないのはなぜ?」
上記のような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
不動産投資では、表面利回りや収入の合計額だけでは、本当の収益性やリスクは見えてきません。
そうした“見えないお金の流れ”を明らかにしてくれるのが、「キャッシュフローツリー」という分析手法です。
そこで本記事では、不動産投資におけるキャッシュフローツリーの基礎知識から具体的な計算方法・活用すべき指標・導入するメリットまでをわかりやすく解説します。
「数字に基づいた投資判断をしたい」「本当に収益が出る物件かを見極めたい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。
ざっくりまとめると
- キャッシュフローツリーとは、家賃収入から支出を差し引いて「手元に残るお金」を見える化する不動産投資の分析手法
- 満室家賃収入から空室・滞納リスク、運営費、返済額を段階的に引いていくことで、正確なキャッシュフローを算出できる
- 主な構成要素には「総潜在収入」「実効総収入」「営業純利益」「税引前キャッシュフロー」などがある
- NOI利回り・自己資金の収益率・返済比率・損益分岐点などの重要指標もキャッシュフローツリーで確認可能
- キャッシュフローツリーを使えば、赤字経営の回避や借入リスクの見極めができ、より安定した投資判断が可能になる
- 数字に基づいて投資の健全性を判断したい方には、キャッシュフローツリーの導入がおすすめ
- 不動産投資に不安がある方は、空室保証・滞納保証付きで安心して相談できる「アートアベニュー」の活用が最適
不動産投資におけるキャッシュフローツリーとは?

キャッシュフローツリーとは、不動産投資におけるお金の流れを視覚的に把握するための分析表です。
帳簿上の利益ではなく、実際に投資家の手元に残るキャッシュフローを算出することに重点を置いており、収益性や借入の安全性を数値で見極めるために欠かせないツールです。
家賃収入から空室や経費、ローン返済などを差し引いて、最終的な手残り額を明示するため、より現実的な投資判断が可能になります。
特に、所有物件それぞれの特性を把握したいオーナーや、初めて物件を購入する投資家にとって、投資の健全性を判断するうえで非常に有効な指標となります。
不動産投資におけるキャッシュフローツリーの計算方法

キャッシュフローツリーの計算は、段階的にお金の流れを整理しながら進めることが基本です。
まず、満室時を前提とした家賃収入=「総潜在収入(GPI)」を算出し、そこから空室リスクや家賃滞納といった損失を差し引いた「実効総収入(EGI)」を求めます。
次に、運営にかかる費用(管理費や税金など)を控除して「営業純利益(NOI)」を算出し、さらに借入金の年間返済額(ADS)を引いて、実質的に手元に残る「税引き前キャッシュフロー(BTCF)」を導き出します。
以下では、この流れの中の各項目について詳しく解説していきます。
総潜在収入
総潜在収入(GPI:Gross Potential Income)とは、対象不動産が満室稼働した場合に得られる年間家賃収入(共益費含む)の合計額を指します。
ここでは実際の入居状況や滞納などは考慮せず、理論上の最大収入を算出します。
要は、現時点での所有物件(または購入候補物件)の設定賃料を12倍(12ヶ月)するのみですが、もし5年間分、10年間分など複数年のシミュレーションを行なう場合には、各年度ごとにキャッシュフローツリーを作成し、各GPIには地域の家賃相場や将来的な家賃下落リスクなども踏まえて現実的に見積もった数字を入力する必要があります。
賃料下落率は、都市部では年1.0%程度と言われます。将来の見通しを立てる際の参考としてください。
特に新築物件を購入する場合などは、初年度は“新築プレミアム”によって高めの賃料が設定されていることを考慮し、退去後に賃料が下がるリスクを反映した数値にすることが重要です。
空室損・未回収損
総潜在収入から、空室や家賃滞納によって得られない収入(空室損・未回収損)を差し引き、賃料とは別で得る収入(その他の収入)を加えたものが「実効総収入(EGI)」です。
まずは差し引き項目ですが、上述の通り「空室損」と「未回収損(未収滞納賃料」がこれに当たります。
空室損は、ご所有物件のキャッシュフローツリーを作成する際は、過去の数字を振り返って、平均の数値を算出しましょう。
なお、“購入予定物件”の空室損は、当然ながら運営してみるまで分かりません。
そこで購入判断時には「空室率」を想定して空室損を仮設定しますが、空室率はエリアや物件の築年数によって異なります。正確な数値を把握するには、地域の不動産会社からのヒアリングが有効です。
また滞納率については、日本賃貸住宅管理協会のデータによると、首都圏での家賃滞納発生率が月末1か月で約2.5%と発表されています。滞納賃料の未回収リスクを減らすには、入居時の家賃保証会社の利用を必須にするなどの対策を検討しましょう。
その他の収入
「その他の収入」とは、家賃以外で得られる不動産収入を指します。
例えば、駐車場や駐輪場の使用料、トランクルーム使用料、看板設置料、自動販売機設置による収入などが該当します。
これらの収入も、実効総収入に加算される形でキャッシュフローツリーに反映されます。
ただし、不確実性の高い収入源については、保守的に見積もることが重要です。
安定的な副収入がある物件は、空室リスクに対する緩衝材ともなり得ますので、投資判断の際はこうした収入源の有無もチェックする価値があります。
運営費
運営費(OPEX:Operating Expenses)は、物件の維持管理にかかるすべてのコストを指します。
代表的なものとして、管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税、保険料、清掃費用などがあります。
これらの費用は、実効総収入から差し引かれ、物件が生む純粋な収益「営業純利益(NOI)」を導き出す上で重要な要素となります。
購入予定物件のOPEXを低く見積もってしまうと、購入前予測と実運営とで、手取りが大きく変わってしまうため注意が必要です。
また、手取りに大きく影響することから、物件の収益改善を考える際には、まずOPEXの内容をチェックするのが定石です。新築か築古か、木造かRCかなど、建物の状態によって変わりますが、OPEXは総賃料の概ね15~25%が適正値です。
キャッシュフローツリーのシミュレーション例

ここでは、実際の不動産投資におけるキャッシュフローツリーのシミュレーション例を紹介します。
以下のケースは、首都圏にある賃貸アパート(8戸)の1年間の収支を想定したものです。
満室時家賃が年間672万円(1戸7万円×12ヶ月×8戸)で、空室率5%、運営費15%、借入返済が年444万円と仮定しています。
項目 | 金額(円) | 備考 |
---|---|---|
①総潜在収入(GPI) | 6,720,000 | 満室想定の年間賃料 |
②空室損・未回収損 | ▲336,000 | 空室率5% |
③実効総収入(EGI) | 6,384,000 | GPI-空室損 |
④運営費(OPEX) | ▲1,008,000 | ①の15% |
⑤営業純利益(NOI) | 5,376,000 | EGI-運営費 |
⑥年間返済額(ADS) | ▲4,440,000 | 1億円/30年/2% |
⑦税引前キャッシュフロー(BTCF) | 936,000 | NOI-返済額 |
このように、実際の物件ごとに数字を当てはめることで、「本当に利益が出るのか」「借入金の返済は無理がないか」「空室や経費にどれだけ耐えられるか」といったポイントを定量的に確認できます。
キャッシュフローツリーは、感覚ではなく数字で判断するための強力なツールと言えるでしょう。
※税引き前キャッシュフローの「税」とは、「所得税」や「住民税」「法人税」等を指しています。これらの税は物件ごとではなく所有者の総所得に対して課税されるため、物件単位の収益性を測る単純なキャッシュフローツリーの作成では除外されます。ご自身の税負担額が分かっている場合は「税引き後キャッシュフロー(ATCF)」を算出してみてもいいでしょう。
キャッシュフローツリーを作るべき理由

キャッシュフローツリーは、不動産投資における意思決定を支える非常に有効なツールです。
収益の実態を「見える化」することで、投資判断の精度を高め、失敗のリスクを最小限に抑えることができます。
以下では、キャッシュフローツリーを活用すべき4つの理由について詳しく解説します。
物件の損益を見極めることができるから
キャッシュフローツリーを作成する最大の目的は、その物件が本当に利益を生んでいるのかどうかを数値で把握することにあります。
帳簿上の黒字でも、個々の物件を細かく見ていくと、実際にはローン返済や運営費で手元にお金が残らない物件があったりするものです。
キャッシュフローツリーによって、個々の物件の収支が明確になり、「儲かる物件」かどうかを冷静に見極めることが可能になります。
自分の求める物件を見極めやすいから
投資家によって、「高利回り重視」や「安定収入志向」など、求める物件像はさまざまです。
キャッシュフローツリーを使えば、物件ごとのキャッシュフロー構造が一目でわかるため、自分の投資方針に合った物件かどうかを選別しやすくなります。
表面利回りだけでは見えない、隠れたコストや収益構造を明らかにすることで、より自分にフィットする投資が可能になります。
返済不能になるリスクを回避できるから
借入を利用した不動産投資では、「返済可能かどうか」が常に大きなリスク要因となります。
キャッシュフローツリーを作成すると、物件の営業純利益(NOI)と年間返済額(ADS)が明らかとなり、そのバランスから「返済余力(DSCR)」を確認できます。
DSCRが低い場合は、収入が少しでも減ると返済が滞るリスクがあるため、購入前にこの指標をチェックすることで、無理な投資(および融資)を避けることができます。
赤字経営に陥るリスクを下げることができるから
不動産投資で最も避けたいのが、運営コストやローン返済に追われる赤字経営です。
キャッシュフローツリーを定期的に作成・更新することで、空室率の変動や運営費の増減などにも即座に対応できる経営体制を築けます。
事前に「損益分岐点(BE%)」を把握しておくことで、「どこまで空室に耐えられるか」「運営費の圧縮余地はあるか」といった判断が可能になり、安定したキャッシュフロー経営を実現できます。
不動産投資でキャッシュフローツリーを活用する際の指標

キャッシュフローツリーは単なる収支の確認だけでなく、判断に有用な「投資指標」を導き出すためのツールでもあります。
ここでは、不動産投資における主要な分析指標として、利回りや返済比率、損益分岐点など、キャッシュフローツリーを活用する上で知っておくべき4つの重要な指標を紹介します。
表面利回り・NOI利回り
表面利回りは、「年間の総家賃収入 ÷ 購入価格 × 100」で算出され、物件比較の初期指標として使われますが、空室や運営費は考慮されていません。
一方、NOI利回り(実質利回り)は、「営業純利益(NOI)÷ 購入価格 × 100」で計算される、実質的な利回りを把握する指標です。
キャッシュフローツリーの作成によってNOIを算出すれば、より現実的な収益性を確認できます。
なお、健全に運営されている物件のNOIは、GPIの75~85%程度となります。購入候補物件のNOI利回りを算出したい場合は、表面利回りを2割引き(×0.8)すると、実際のNOI利回りに近い値が速算できます。
自己資金利回り(CCR)
CCR(Cash on Cash Return)は、「税引前キャッシュフロー ÷ 自己資金 × 100」で算出され、自己資金に対する利益の割合を示します。
ローンを利用した投資では、購入価格全体の利回りとともに、このCCRが重要な指標となります。なぜなら、CCRは自分が使った(投資した)お金がどれくらいの効率で回収されるかを示す値だからです。
仮に、物件の購入時に2000万円の自己資金を投下し、BTCFが200万円になるとしたら、CCRは10%。10年の保有で投下した資金を回収できることが分かります。
キャッシュフローツリーで手元に残る金額が明確になることで、自己資金の投資効率を正確に評価することが可能です。
返済比率・返済倍数(DSCR)
返済比率は、「 営業純利益(NOI)÷年間返済額(ADS) 」で求められます。
「DCR」や「DSCR」と呼ばれ、返済が収益に対してどれくらいの割合を占めているかを示す重要な指標です。
計算の結果、1を下回っているとしたら、年間の収益が返済額を下回っている非常に危険な状態と言えます。
一方、DSCRが1.2~1.3といった数字であれば、年間の返済額に対してある程度の余裕のある収益が得られていることになります。返済不能に陥る心配の少ない、安全性の高い投資であると言えるでしょう。
キャッシュフローツリーを通じてこの数値をチェックすることで、返済計画の妥当性を見極められます。
損益分岐点(BE%)
損益分岐点(BE%:Break-Even Ratio)は、「(運営費+年間返済額)÷ 総潜在収入 × 100」で算出され、不動産投資において収支がプラスマイナスゼロになる稼働率(家賃収入の割合)を示します。
この数値が高いほど、わずかな空室や賃料下落で赤字に転じるということです。
仮に、賃料7万円・計8戸の物件のBE%が90%であったとしたら、1部屋が1年間空室であっただけでも、あるいは、全室の賃料が1万円ずつ減少するだけでも、経営が破綻することになります。
単年度では「そんなこと起こらないだろう」と思うでしょうが、では10年後はどうでしょうか。
空室率5%と、賃料下落5000円ずつの合わせ技でもBE%:90%は割れてしまいます。
不動産投資は、時に数十年におよぶ投資だからこそ、BE%を計算することで、「空室にどこまで耐えられるか」「賃料下落にどれだけ耐えられるか」が具体的に把握でき、長期間のリスクコントロールの指針になります。
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まとめ

今回は、不動産投資における「キャッシュフローツリー」の基本的な考え方や構成要素・計算方法・活用すべき指標について詳しく解説しました。
キャッシュフローツリーを活用することで、物件の収益性やリスク、返済余力を数値で可視化でき、感覚に頼らない投資判断が可能になります。
また、物件選びや資金計画の精度も向上し、長期的に安定した投資運用を実現するための重要な判断材料となります。
一方で、キャッシュフローツリーを正しく作成し、活用するためには専門的な知識やデータ収集も欠かせません。
誤った知識で作成してしまうと、不動産投資で損失を被るリスクもあります。
そこで、不動産投資を検討している方には、アートアベニューへの相談をおすすめします。
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