第127回 入居者ニーズアンケート調査の解説②
リフォーム物件なら築年数は気にしない
内容次第で「古くてよい」との回答が58.4%
前回に続き、私が幹事を務める「21C 住環境研究会」と「リクルート住まいカンパニー」との共同で2年に1回行っている「入居者ニーズと意識調査」第8回目の結果を考察したい。
■ 築年数の重視度
(図1)は前回2015年の調査でも聞いている問なのだが、「部屋探しのときに築年数をどの程度重視したか」というものだ。
「とても重視する」と「やや重視する」を合わせて約6割と前回と変わらなかった。
ただ、「とても重視する」は17.0%から13.9%に低下している。
築年数がたっている物件は一般的に設備仕様が古く、特に水回りのバス・トイレやキッチンが汚れていたり機能が劣っていたりすることが多いのでそれを危惧しているのだろう。
次の問(図2)では「部屋選びの基準として、築年数をどのように考えますか」と聞いている。
ここでは、「リフォームされていてきれいならどうか」という選択肢をはさんでいるのだ。
すると、「リフォームされていてきれいなら築年数が古くてもかまわない」が、特に新規契約においては50.3%あり、前回15年時調査より7.4%増えている。
「むしろ築年数が古い物件の方がよい」と「特に築年数は気にしない」を足すと、58.4%が「古くてよい」と答えている。
前回は54.2%だったので、支持が増えていることになる。これは、リノベーションの文化の定着があるのだろう。
たとえ、築年数が古くても内容次第だ、という人が多くなっているといえる。
また、現在築25年物件は平成6年(1994年)完成、築30年の物件でも平成元年(89年)完成の物件ということになるが、全部平成の時代の完成であり、それなりに質が高い時代の物件といえるのではないか。
■ オーナー併用物件
(図3)は「オーナー併用物件(最上階や1階などにオーナーが居住している)についてどのようなイメージがありますか」という問だ。
賃貸住宅においては結構な割合である形態であり、大家さんにはちょっと言いづらい質問なのだが、入居者の本音を聞いてみたかったのだ。
「安心できるし、何かあったら頼れるので、併用物件の方が好ましい」が15.9%、「気にしない、どちらでも構わない」が45.8%で、ポジティブな方は計61.7%であった。
反対に「干渉されそうなので、あまり好ましくないが部屋が気に入れば入居する」が25.6%、「オーナーとはかかわりを持ちたくないので、併用物件には住みたくない」とする完全否定派が12.7%という結果になった。
「併用物件のほうが好ましい」と答えた方は、大きな震災があったときなど、大家さんがいる方が安心と答える女性がイメージできる。全体的には思ったより否定派は少なく、個人的には安心した次第だ。
20年以上前に、女性の入居者の部屋に点検と称して(実際に点検ではあったのだが)、断りなく部屋に入ってしまった大家さんがいたことを思い出す。
もうそんなことをする人はいない?と思うが、大家さんに限ったことではなく自分の生活に干渉されれば誰でも嫌だろう。
■ 民泊併用物件
(図4)は「自分が住んでいる物件で民泊の運用がされており、外国人など旅行宿泊者の出入りがあった場合に、どのように感じますか」というものだ。
「気にせず住み続ける」が27.0%、「気にはなるがすぐには引越しをせず、更新時には引越しを検討する」が51.6%、「気になるので早急に引越しを検討する」が21.4%であった。
意外に「引越しを検討する」人が多いという印象だ。
しかし、あくまで「検討をする」わけで、「引越しをする」と決定しているわけでもない、とも読み取れる。
アンケートというものは質問の仕方が難しい。
7割以上の方が外国人の旅行宿泊者が建物内をうろうろしていれば気になる、好ましくない、と答えているのは把握できる。
藤澤 雅義(Mark藤澤)
アートアベニューの代表取締役であると同時に、全国の賃貸管理会社を支援するコンサル企業:オーナーズエージェント株式会社の代表取締役も務める。
しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。
あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に時津風部屋)を応援している。