新規飼育数は出生数超え! 少子化時代、 ペット需要 を取り込むための賃貸経営戦略
一般社団法人ペットフード協会の調査によれば、2024年に新規に飼育開始された犬と猫の合算数は80.3万頭。驚くべきことに、これは同年の日本の出生数68.6万人を10万以上も上回る数字です。
今やペットは、多くの人にとって“家族の一員”。
そして、その“家族”の住まいとなり得る賃貸市場にとっても無視のできない存在です。少子化も刻々と進む中、ペット需要を上手く賃貸経営に取り入れるポイントを確認しましょう。
賃貸市場に2割の希少性、圧倒的集客力で差別化
空室対策としての「ペット可」の魅力は、なんといってもその“希少性”が生み出す集客力の高さです。
分譲マンションでは築浅物件の9割以上がペット可であるのと対照的に、賃貸住宅におけるペット可物件は現在でも少数派です。LIFULL HOME’S(株式会社LIFULL)が2025年5月に発表した「ペットとの住まい探しの実態調査」によれば、ペット可賃貸物件は募集掲載数の19.3%。2021年に比べれば1.5倍程度に割合が増えたものの、今なお市場全体の2割ほどに留まっているのです。
また、同調査ではこの希少性が、①通常よりも高い賃料で、②通常よりも早い成約を叶えていると分析しています。
需要に対して供給が少なければ、商品が奪い合いとなり価格が上昇するのは市場の基本原理です。
さらに、次の引っ越しを考えた際にも他のペット可物件が見つかりにくい故に、③通常よりも長い入居期間も期待できます。ペット可は、賃料・空室期間・入居期間の3点すべてで大きなメリットがある空室対策なのです。
考慮すべきリスクは修繕費やトラブルの増加
これほどのニーズとメリットがあるペット可物件にも関わらず、賃貸市場において少数派であることには、もちろん明確な理由があります。
分譲マンションのように大多数がペット可物件とならないのは、ペット可にそれだけの「リスク」があると多くの賃貸経営者が考えているからに他なりません。
最大のリスクは、やはり原状回復工事です。分譲マンションと異なり、数年おきに退去に伴う原状回復工事が発生する賃貸住宅では、その費用負担が大きな課題となります。
ペットによる噛み付きや引っかき傷の修繕は、ある程度は「ペットの過失」として借主負担とできますが、経年劣化分の貸主負担は通常より高額になりがちです。また、こうした損傷や糞尿の汚れ、におい等によって、建物自体の劣化も早まります。
さらに言えば、飼育マナーや鳴き声等によって、入居者同士や近隣住民とでトラブルが発生する可能性もあります。ペット可による利益は、決して希少性のみで得られるのではなく、一定のリスクを負うことの対価でもあると心得ましょう。
築浅ならリスクを低減、築古物件ならリターンを享受
しかし、ペット可がハイリスクハイリターンな経営戦略かと言えば、そうとも言いきれません。
なぜなら、前述の“リスク”は十分に予測可能で低減できる余地があるからです。
例えば、建物の劣化リスクは「ペットの傷やにおいに強い壁紙・床材」等を採用し、破損の可能性を狭めることで対策できます。また、「物件力で勝負できる築浅のうちはペット可にしない」と決めて建物を温存し、経年劣化が目立ってきた頃合いで「ペット可に切り替える」という戦略も。もちろん切り替え時には“ペットNG”の入居者への配慮が必要となるものの、築古物件の差別化策としては有効でしょう。
入居後トラブルのリスクには、予めペットの種類や飼育頭数に制限を設けたり、予防接種済証や避妊・去勢手術証明書などの提出を義務付けるなどで、最低限の飼育モラルを備えた賃借人のみに貸し出すなどの対策が考えられます。
さらに「ベランダ飼育禁止」「共用部排泄禁止」「共用部は抱き上げ移動」など、ペットを飼う人だけでなくペットを飼わない入居者にも配慮した飼育ルールを作成すると、マナー問題の発生抑止につながります。
ペット共生型はソフト・ハードの両面から差別化を
築年数が経ってから状況に応じてペット可に条件変更するという戦略に対して、建物の企画当初からペット飼育者に照準を合わせる「ペット共生型賃貸」なら、ペット可住宅のメリットを最大限に引き出すことができます。
ペット共生型とは、単なる“ペット可”ではなく、ペットとの暮らしがより良いものとなるよう工夫された物件を指し、具体的には飼育ターゲットごとに次のような差別化ポイントを備えます。
設備の一つひとつは大幅なコスト増とならない一方で、賃料は“ペット可”よりも上昇幅が期待できることから、共生型の新築供給数はこの数年で増加傾向にあります。
また、最近では「大型犬可」「多頭飼育可」といった一般的なペット可物件では難しい条件を容認する物件や、地域の動物病院・ペットホテル・トリミングサロン・しつけ教室等と提携し、ソフト面からもペットとの快適な時間をサポートする物件が登場するなど、共生型の中でも多様化が進みます。
その他、住人同士でペットの見守り合いができるシェアハウスや、保護猫との出会いや保護活動支援ができるアパート、ペットシッター常駐のマンションなど、様々な企画の広がりを見せるペット可賃貸住宅。運用を担う管理会社とも相談しながら、ペット需要を取り込むスタンスとタイミングを検討してみてはいかがでしょうか。



