建築費高騰時代のアパート建て替え~ 収益性確保 の工夫①~【不動産経営お役立ちコラム】
(※この記事は「不動産経営お役立ちコラム」2025年8月号のWEB再録版です)
このコラムでは、大家さんの賃貸経営に日々携わるアートアベニューの社員が、大家さんの不動産経営や資産運用のお役立ち情報を手短に発信してまいります。是非、お付き合いください。
先日、横浜市で市営住宅の建替事業が入札中止となりました。全事業者が入札辞退したためで、背景には建築費の高騰があるとみられます。
弊社でもアパート・マンションの建替のご相談を承っており、事業収支を試算しますが、建築費の高騰で確かに収益率は以前より下がりました。
その結果を見て建替を躊躇されるオーナー様もいらっしゃいますが、今後も建築費が下がる見込みは薄く、老朽化した建物の維持にも限界があり、お子様への承継前に建て替えたいなどのご事情もあると、最終的に建替を決断される方が多いようです。
しかしそうすると、建築費が高い中で可能な限り収益性を高める工夫が必要となります。
また、収益性を高める=リスクも高まるため、これまで以上にシビアなリスク分析、きめ細かい計画、冷静な判断が不可欠です。
今回から数回に分けて、建替時に収益率を高める代表的な方法をご紹介します。
容積率を高め土地の潜在力を使う
特に地主さんの建替計画では、「建築費1億円、家賃800万円なので利回り8%」など、建築費に対する利回りを意識することが多いと感じます。
しかし土地も使って賃貸経営するのですから、本来は土地の価値も投資金額に加えて考える必要があります。土地が1億円なら建築費と併せて2億円の投資、利回りは4%です。
この「土地の価値も投資金額に加える」という考えに基づくと、図のように建築費に対する利回りが同じプランでも、より容積率が大きいBの方が収益率は高まります。
これは土地の投資価値は変わらない一方で家賃収入が増えるためです。容積率を高めることで土地の潜在力を活用できます。
図:容積率(建物の規模)の違いによる利回りの比較
建築費は増えるが、その土地の容積率いっぱいまで使った建物のほうが収益性は高まる。
エリアの力を使い、あえて狭い間取りに
一般に、単身間取りは供給が多いため、供給の少ない広い間取り(2LDK等)にすることは安全性の高い選択です。
しかし、建築費が上がると広い間取りでは収益率が伸びず、それこそ土地を加えた利回りでは全く採算が合わない場合もあります。採算が合わないのでは何のための建替なのか分かりません…。
そうなると検討すべきは、あえて狭い間取りにして収益率を高める方法です。
狭い間取りは長期的な需要維持に不安がありますが、人気のエリアであれば過度に安全性を優先するよりも、リスクを取り狭い間取りで収益性を高めるのも一手かと思います。
1K・1Rが心配であれば30㎡程度のコンパクト1LDKを造る方法も検討できます。
付加価値づくりで差別化
他物件にはない価値を創ることで相場を超える賃料を実現することは理想的です。ただし、収益率を維持するとなると、建築費をさほど変えずに価値を創る工夫が必要になります。
例えば、小商い賃貸、ペット共生型住宅、特定の趣味・価値観を持つ人に向けたコンセプト賃貸など、家賃が高くても「好き!」が優先されるような物件が代表例です。これらは専門知識やノウハウが必要なことが多く、誰でも簡単にできるとはいえませんが、実現できれば非常に大きな価値を生み出す可能性を秘めています。
大家さんの趣味を活かした成功事例もありますので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか
このコラムの執筆者:片平 智也
2011年入社。プロパティマネジメント事業を統括する傍ら、全国の不動産会社や業界団体の研修講師も務める。
土地取得から新築したアパートを経営する「大家」でもあり、賃貸管理実務と大家経験から得た知識を、大家さんのお悩み解決に役立てている。
保有資格にCPM®、CCIM、不動産コンサルティングマスター、相続アドバイザーなど。



